一般的な先進国株式インデックスファンドがベンチマークにしている指数(「MSCIコクサイ・インデックス」)の過去のデータを使って一括投資と積立投資の成績を5年、10年、15年で比較してみました。

積立投資より一括投資のほうが資産全体の運用期間が長くなるので合理的と言われていますが、実際の評価額にどれくらい差があるものなのか確認してみました。


先進国株式インデックスファンドの特徴

eMAXIS Slim 先進国株式インデックス』や『<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド』などの先進国株式インデックスファンドは、日本を除く先進国の株式市場を対象にした「MSCIコクサイ・インデックス」(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざしています。

ベンチマークの指数は北米、欧州、アジア・オセアニア、中東の22ヵ国の大型株と中型株1,283銘柄で構成されています(2022年1月末現在)。

MSCIコクサイ・インデックス 業種別構成比と国別構成比


先進国株式の一括投資と積立投資の成績は?

一括投資は最初から元本をすべて投資します。積立投資は期間中、毎月1万円ずつ投資していきます。

5年(2017年2月末~2022年1月末)の成績は、元本60万円に対して一括投資の評価額は1,176,790円(収益率 96.1%)積立投資の評価額は919,991円(収益率 53.3%)でした。

先進国株式 一括投資と積立投資の成績【5年】

10年(2012年2月末~2022年1月末)の成績は、元本120万円に対して一括投資の評価額は5,307,569円(収益率 342.3%)積立投資の評価額は2,592,356円(収益率 116.0%)でした。

先進国株式 一括投資と積立投資の成績【10年】

世界的な金融危機であるリーマン・ショックをはさんだ約15年(2007年2月末~2022年1月末)の成績は、元本180万円に対して一括投資の評価額は5,609,458円(収益率 211.6%)積立投資の評価額は5,280,737円(収益率 193.4%)でした。

先進国株式 一括投資と積立投資の成績【15年】

過去15年の成績では一括投資には及ばないものの積立投資も健闘していますね。

上記の試算は、大和アセットマネジメントの「iツール」のドルコスト平均法シミュレーションを利用しています。

過去のデータは将来の運用成績を保証するものではありません。シミュレーションの結果が良好なのは世界的な金融緩和の恩恵もあり過信は禁物です。


まとめ

金融緩和の追い風もあってか、リーマン・ショックを含む過去15年の場合も先進国株式は極めて好調な成績でした。

単純に評価額だけで判断するなら、一括投資のほうが、機会損失の発生する積立投資よりも合理的に思えます。長期の運用では、より長くお金を働かせられる一括投資のほうが配当や複利効果の恩恵が大きいのでしょうね。

積立投資のデメリットは?一括投資のほうが効率的な場合も(カブヨム)

とはいえ、まとまった投資資金を最初から用意するのは難しいですよね。

仮に用意できたとしても、大きな金額を投資した直後に相場が急落するようなことがあったら、冷静ではいられず損失を抱えたまま撤退することにもなりかねないです。

リスク資産の運用に不慣れなら、まとまった投資資金がある場合でも少額の積立投資からスタートしてみるのも一案でしょうか。

下記の株価の乱数予測モデルを前提にしたシミュレーションによれば、一括投資と比べた場合、積立投資(ドルコスト平均法)は大儲けする可能性が減る代わりに大損する可能性も抑えられ、一番可能性の高い最頻値(期待値)をプラス方向に押し上げる効果が望めそうだとのことです。

ドルコスト平均法を、ガチで分析してみた(日興フロッギー)

ドルコスト平均法と一括購入の資産評価額の比較

あるいは部分的に一括投資と積立投資を組み合わせてみるのも悪くないアイデアかもしれませんね。

いずれにせよ冷静な判断力を保つには、預貯金や個人向け国債などの安全資産(生活防衛資金を含む)を十分に確保することも忘れないようにしたいです。

株は何割?初心者でもできる「資産配分」計算式:ポートフォリオの作り方(楽天証券トウシル)

先進国株式インデックスファンドのコストと成績、リスク・リターン特性については下の記事を参考にしてください。

低コストな方が本当に好成績?『eMAXIS Slim 先進国株式インデックス』『つみたて先進国株式』『eMAXIS 先進国株式インデックス』SlimとFatの評価額の差は?

eMAXIS Slim 国内株式・先進国株式・新興国株式の実質コストと運用実績を比較 リスク・リターン特性も評価


バンガード「終わりのない弱気相場はない」より

直近のマーケットでもコロナ・ショックがあったように資産運用には好不調の波がつきものですよね。弱気相場になると悲観的になりがちですが、長期の目線も忘れないようにしたいです。

世界最大級の運用会社バンガードは、市場を長期的視点で見ると「世界的な強気相場によるリターンは弱気相場の損失を補って余りある」と述べています(バンガード「終わりのない弱気相場はない」より)。

世界の株価

投資に関して見失いがちなもう一つの事実は、弱気相場には終わりが来るということ、そしてチャートが示すように、弱気相場を耐え忍んだ投資家は、その忍耐強さが報われてきたということです。